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スペイン1

スペインの電車

​スペインの電車

ガイドブックによると、フランス→スペインの電車は

ユーレイルパスを持っていても、500円位払って座席の予約をとる必要があり、

もし予約をとらずに乗ってしまったら、途中で降ろされると書いてあった。


ガイドブックを見たのが発車30分前で、しかもちょうどフランスの通貨フランを

使い切ってしまった後だったので(やっぱり計画性なさすぎ)

『それはやばい!』と思い、急いで両替に行ってみると長蛇の列になっていた。


♪急げ~急げ~時が~そーこまーで~、来てる~Oh Yeah!

と、心の中で省吾さんの『幻想庭園』を歌いながら順番を待っていたが

20分経っても、いっこうに窓口までたどり着けない状態・・


発車の時間が迫ってきたので、

 

受け入れるかそれとも吹き飛ばすか・・もとい、

出発を明日に延ばすかそれとも予約のないままダメもとで電車に乗ってしまうか

 

の選択に迫られ、殆ど迷わず後者の方を選んだ。


そして、フランスのフランもスペインのペセタも持たないまま電車に乗り込むと

 

国境を越えた辺りで、加トちゃんみたいな車掌が検札にやってきた。


パスを見せろと言われ、しぶしぶ差し出すと案の定

「パスの他に座席の予約券が必要だ」と言われてしまったので

『ここは何も知らない外国人になり切ろう』と思い、

「えっ!そうなんですか?!」とわざと驚いてみせて

「今手持ちがないからバルセロナに着いたら両替して必ず払います」

とお願いしてみた。

 
車掌は難しい顔をしてしばらく考え込んだ後、

「本来は降りてもらうべきなんだが・・」みたいな事を言ってきたので

ひたすら謝るしかないと思い、プライドを捨てて謝り続けたら

何とか許してもらえたけど、車掌はすごく怒ったままだった。


夜の9時バルセロナのフランサ駅に着き、

『このままバックレてもわからないよな・・』とは思ったけど、

人間として恥ずかしい事をしたくなかったので、両替をして加トちゃんを探した。


なかなか見つからなかったけど、30分くらい根気よく探してようやく見つけ

「はい!遅くなりました」と予約分のお金を渡すと、加トちゃんは

「本当に持ってきてくれたのか!?」とかなり驚いて初めて笑顔を見せてくれた。

(やっぱり加トちゃんは笑顔じゃなきゃ♪)

日本人宿

てことで、すっかり遅くなって夜の10時


この旅の最後の国、スペインのバルセロナに無事到着!!



こんな時間にスペインに到着してしまって大丈夫かとお思いでしょうが

その日は、日本人の日本人による日本人のためのペンションを

フランスから電話で予約してあったので大丈夫なのよん。(名前はチキート)


そのペンションはビルの5階にあり、

夜間は1階入り口の鍵が閉まっているので、向かいの公衆電話から宿に電話すると

 

日本人の男性が迎えに来てくれた。


ビルにはなんとエレベーターがないので、5階までは階段で上らなくてはならず

その人が親切に「荷物を持ってあげるよ」と言ってくれたけど

私の荷物がデパートの紙袋1つなので多少驚いたようだった。


ペンションに入ると、”居間”と呼ばれる空間に案内され

その人が宿の設備やルールについて一通り説明をしてくれた。


 

この居間は宿泊者の共有スペースになっていて、漫画や文庫本も沢山あり

いつもホットコーヒーが無料で飲め、冷蔵庫も自由に使ってよく

昼間に限りキッチンも使えるので自炊も出来た。


迎えに来てくれた人は、通称 ”大将” と呼ばれていて

年は30前後で(詳しくは教えてくれなかった・・)

チキートに居候して3年がたつらしかった。



大将の他に長期滞在者があと2人いて、クリスティーナと呼ばれる

日本人の女の子(美術の勉強をしている)と、横みっちゃんと呼ばれる

私と同じ年の男の子がそれぞれ1年くらい住んでいた。


チキートは日本人しか泊めないので、

なんだか一足先に日本に帰ったみたいな気分になれて

久しぶりに日本語の会話を楽しみ、今日一日殆ど移動で終わって

疲れきった体を癒してもらって、その日は泥のように眠った。

 

日本人宿
ダリ美術館

ダリ美術館

翌日の朝、

 

ここスペインまでほぼ予定通りでユーレイルパスがあと1日残っていたので、

大将とクリスティーナお勧めの、バルセロナから電車で2時間くらいの

フィゲラスという所にあるダリ美術館に行く事にした。


お昼に、フィゲラス駅から美術館に行く途中のレストランでランチを食べたら

デザートに大きめのプリンが2つも出てきたので、

『間違えたのかな』と思い周りを見ると、みんな1人に2個づつプリンが出ていて

『きっと、まだまだ世界には私の常識では解らない事がいっぱいあるんだろうな』

 

と思った。


ダリ美術館は、私の想像していた普通の美術館とは全く違っており

まずその外観が奇抜だった。



卵のオブジェが建物の上にズラーっとならんでいて異様な雰囲気を漂わせ、

中に入るといろんな仕掛けがあり、

美術館というよりはカラクリ屋敷の印象を受けた。


普通の部屋に見えても、ソファや絵の位置が計算して配置されていて

ある場所から部屋全体を見ると女の人の顔にみえたり、

展示されているものは、だまし絵チックなものが多くとても楽しかった。


ここのおかげでダリという人に興味を持ったので、

日本に帰ってから、ダリの作った映画『アンダルシアの犬』という映画を見てみたけど

 

残念ながらちょっと異様過ぎて、私にはいまいち理解できなかった・・   

帰国を延ばす

帰国を延ばす

翌日の朝、いよいよ日本への帰国が3日後に迫った日

マドリードに移動してスイスから送った荷物を引き取り、

帰国予定日までの3日間を過ごすつもりだった。


チキートの居間で朝食を食べながら、大将と話していて 

 

「あー、もう少しここにいたいな。」とこぼしたら、大将が

「じゃあ、延長すれば?」と目からウロコの提案をしてくれた。


実は私の買った飛行機のチケットは、 ”オープンチケット” という

帰国日が有効期間内なら変更可能というものだったのだ!



気分は一気に延長モードに突入し、

 

早速親に電話して了解を得る事にした。


でも日本を出る時にすごく反対した親を思い出し、

『きっと怒られるよな・・』と思いながら、恐る恐る親に電話して 

「あのさー・・もう少しこっちにいてもいい?」と、怒声を覚悟して聞くと

「うんいいよー。バイトでも決まったのかね?」と楽観的すぎる返事が返ってきて 

ドリフのコントのようにずっこけてしまいそうになった。


帰国日もいつでも良いと言ってくれ、

決まったら帰る前日に電話すればいいから、そうしょっちゅう電話するなと言われ

なんだか

 

♪しあわせ~半分~ あと悲しみ半分それでもいいね~ ラブトレインって感じ?

 

ということで、せっかくなので

 

チケットの有効期間ギリギリの90日まで延長することに。



思いがけずもう一ヵ月半延長することになって、滞在日数が当初の予定の倍になってしまったが

ここまでなるべく切り詰めてきたおかげで、トラベラーズチェックがまだ10万円以上残っており

物価の安いスペインだけで過ごせばなんとかなりそうだった。


チキートが気に入ったので、帰国までずっとここにいたかったけど

まずは荷物を取りに行かないと、さすがに後一ヶ月半紙袋の生活は苦しいので

夜行の長距離バスでマドリードに向かうことにした。

(スペインはバスが充実していて、安く色んな所に行けるのだ。

  バルセロナ→マドリードは8時間かかるけど料金は2千円くらい!)

マドリードにて

マドリードにて

朝7時マドリードのバスターミナルに着き、

マドリードにも日本人宿があると『地○の歩き方』に載ってたので

電話して今から行ってもいいかと聞くと、宿の人が

「部屋は空いてるけど、今の時間(早朝)は人が少なくて危ないから

朝9時までバスターミナルのカフェで時間を潰してから来て」と言われた。


言われたとおり9時まで待って宿に着くと、

オーナー夫妻から宿の周辺地図を渡されたので、見ると治安の悪い場所に赤い印がつけられており、

「ここは絶対立ち入らないように。それからカバンは絶対持たないで」と注意された。


同じ日本人宿でもマドリードとバルセロナは随分違っていて

チキートの放任に比べ、ここは治安の関係もあるとは思うけど

 

少し過保護ぎみで、内心 

『そんなにガチガチにガードしなくても大丈夫でしょ』と思っていた。


だがっ!そんな私に罰が当たったのか 

スイスから送った荷物を駅に取りにいくと、鍵のかからないトランクの方の中身が

なんと半分以上抜かれていて愕然とすることに・・


安全な鉄道駅の荷物保管所で盗難にあってしまい、

バルセロナで緩みきっていた気持ちが一気に引き締まり、

忘れかけていた旅の初めの緊張感が戻ってきた。


盗まれたのは、イタリアで買ったコーヒーカップ5客とコーヒー豆、

姉のお土産のサイフなど、金額にすれば3万円位で

海外旅行保険に入ってたのでお金は全部戻ってきたが 

旅の思い出の一部の品がなくなったのは辛い・・

(木彫りのふくろうは無事だった)

 

いずみちゃんとサエコさん

​いずみちゃんとサエコさん

傷心しながらセブン○レブンで水とヨーグルトを買って宿に戻り、

居間の冷蔵庫にしまっていると、女の子が一人居間に入ってきて

私を見て「こんばんは」と言ってくれた。


その人はサエコさんといい、フラメンコ留学のため自分でアパートを借りて住んでおり

今日はアルボル(この宿の名前)に泊まっている友達に会いに来たのだが、

出掛けていてまだ帰ってきてないんだと話してくれた。


居間で一緒に待ちながら話していると、友達が帰ってきて

私も一緒に夕食をどうかと誘ってくれたので、一緒に連れてってもらうことにし

”てるてる” という庶民的な日本食屋さんに入ると

それぞれ自己紹介みたいな事をして、女同士のお喋りが始まった。


サエコさんの友達は私より1歳上のいずみちゃんというカメラマンで、

スペインにしばらく滞在した後、スペインの南にあるジブラルタル海峡を渡って

アフリカのモロッコに行き、個展の写真を撮りに行くつもりだという。

(サエコさんといずみちゃんも最近知り合ったばかりだったらしい)


2人とも自分の好きな道を目指して頑張っていて、

話を聞いているだけで何ともいえない血がたぎる様な熱いものを感じさせてくれた。

(どうも私は表現が下手だな・・)


それに比べ、私の旅は目的といえば食べ物ばかりで

行く場所といえば観光地よりも市場やカフェが多いというありさまで

 

恥ずかしくなったが、2人とも喜んで私の今までの旅の話を聞いてくれた。

yonin.bmp

左がいずみちゃんで その向かいがサエコさん
写真は翌日ノミの市に行ったときのもの。

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